夜道

 夜の道を歩いていると、ふしぎなものに出会うことがある。
 最初に見たのは、黒いカンガルーだった。耳も、足も、袋も無かったけれど、カンガルーだと一目でわかった。
 カンガルーは、特に何をするでもなく道に寝そべっていた。ちょうど僕が通ろうとしたところを塞いでいたので、「ちょっとどいてくれ」と言ったら、素直に道を空けてくれた。
 次に見たのは光る空き缶であった。それは蛍のような明滅を繰り返してた。拾ってみると、飲み口の中から雲のような蒸気のような、もやのような気体がもわもわっと噴き出してきた。危険な感じがしたので、思わずそばの公園の茂みに投げ捨ててその場を後にした。
 つい最近見かけたのは、眼鏡をかけたハンドボールだ。そいつはすごいスピードで、ファミレスと自動車整備所の間の道路を行き来していた。
 何をしているのか聞いてみると、回転レシーブの練習中だと言う。それはバレーボールじゃないか、と思ったが、あえて何も言わないことにした。その後ろ姿はなんとなく寂しげだったのだ。