街と壁

街があった。その街は、壁に囲まれていた。僕は、壁から出たかった。でも、出られなかった。なぜだろう?出ようとするといつも失敗するのだ。
魔法を使うことができた。僕だけの、オリジナルの魔法。何でもできた。何でも。でも、街から出ることだけはできなかった。
いつからだろう。街から出ることを諦めてしまったのは。諦めるべきではない、という気持ちはある。だけれど、叶わない望みを持ち続けるほど難しいことはない。
もう既に、僕は街の一部になってしまっているのかもしれない。僕の血や肉は壁と同じ材料で出来ているのかもしれない。
何れにせよ、僕の生命活動は、今のところまだ続いている。街の一部として生きることに、何の意味があるのだろうか?そんな問いの立て方自体に意味があるのかどうかさえわからない。