あらゆる人の心の中には亀がいる。亀は甲羅の中からじっと外を見つめるばかりで、なかなか動こうとはしない。しかし生きている。
なぜ出て来ないのか。寒いのか。怖いのか。それは亀を持っている本人にさえわからない。
ある日突然、亀は首をもたげ、手足を伸ばすだろう。それは凍える吹雪の日かもしれないし、吹き荒ぶ嵐の日かもしれない。
亀が動き出す日。一体何が起こるだろう。おそらくそれは目に見えない変化だ。でも、それ以前とそれ以降とでは、確実に何かが違ってしまっている。そういうことはいくらでも起こりうるのだ。