自分に素直になること。

 どうやら僕は、ある人を、とても深く傷つけてしまったみたいだ。そしてその人は、静かに怒っているみたいだ。

 僕自身も傷ついている。ずっと胃腸が痛い。抜け毛が増えた。でも、そんなのは言い訳でしかない。僕は、その人に復讐されてもしかたがないくらい、ひどいことをしたのだ。

 なるべく素直に、自分の話をしようと思う。それが罪滅ぼしになってくれたらいいなと思う。いや、そこまで期待するのは虫がよすぎる。ただ単に、僕にはもう、素直になる以外の道が残されていない。それだけのことだ。


 好きな人がいた。でも、その人は僕のことを友達だと思っているみたいだった。だからせめて友達でいたいと思った。そう思って、ずっとやってきた。

 その人が苦しんでいるとき、なにか力になりたいと思った。でも、なにかをすることは、その人からの関心を引くことにつながるのではないか、という恐れがあった。そして僕は、その人にとっての大事な人に、少しだけ嫉妬してた。そしてなにより僕は、物質的にも精神的にも、その人の力になれるようなものを持ちあわせていなかった。

 そのせいで僕は、上手く動くことができなかった。そして、それを恐れていたにも関わらず結局、その人の関心を引くようなことを言って、その人を怒らせてしまった。

 多分僕は必死になっていたのだろう。そしてそれは、僕の本当の気持ちだった。でも、そんなことを言うべきではなかった。よりによって苦しんでいる人に対して。

 それだけでなく、僕は、その人に対して、自分が嫉妬していたことを伝えてしまった。どうしてそんなことをしたのだろう。多分、隠し続けることに耐えられなくなっていたのだろう。

 そして逃げた。怖かったから。今にして思えば、僕が恐れていたのは、自分に素直になること、だったのかもしれない。


 大げさかもしれないが、僕はその人に、生きる勇気をもらっていた。その人がいるから、自分はまだなんとか大丈夫だと思っていた。その人がいるから、自分は頑張れると思っていた。ずいぶん勝手な話だけれど。きっとその人は知らないだろうけれど。

 でも、そんな風に思うことが、その人に精神的に頼ることになって、僕の心の弱さを生んでいたのかもしれない。もちろん、自分の弱さを、その人のせいにするつもりはない。自分の弱さは、自分の問題だ。


 けっこう前に、就職活動をしたが、上手くいかなかった。

 なぜ上手くいかなかったか、ずっと考えていて、理由は百個くらい言えるのだが、一言で言えば、自分に自信がなかったからだろう。就職試験にも、その後にある仕事に対しても、「自分なんかにうまくやれるわけがない」という観念が消えなかった。そんなやつがうまくやれるわけがない。

 今は、ネットで細々と収入を得ながら、実家暮らしをしている。ブログにゲームについて書いているのも、その一環だ。だから半分仕事みたいなものだ。あくまで半分くらい、だけれど。

 小遣いのようなものは貰っていないが、生活費を入れてもいない。自分が普段なにをやっているかを、家族に教えてさえいない。自分のやっていることに、自信がないから。またそれだ。

 そんな自分を、家族は生暖かく見守ってくれている。今すぐ放り出されても文句は言えないというのに。ありがたい話だ。

 ブログをやり始めたのは、本を読んだり、mixiで日記を書いたりするのが好きだったからだ。今でも、それをなにかに繋げられたらいいなと思っているが、どうしていいのかわからない。


 僕はその人に、謝りたいと思っている。でも、謝る資格さえないないんじゃないかとも感じている。

 そろそろ僕は、自分の弱さを自分で引き受けて、なんとかしなきゃいけない時期に来ているんじゃないか。その人と関わることは、その人に頼ることは、自分のためにならないんじゃないか。

 なにより、僕のように弱っちいやつが足元にいたら、その人が先に進む妨げになってしまうのではないか。


 それでも僕の中の別の部分は、その人と離れたくないと感じている。たとえその人が、誰かの一番弱いところを的確に攻撃できるほど、残酷だったとしても。

 もちろん、矛盾している。矛盾したことを求めるのは、間違っている。でも今の僕は、自分に素直になることしかできない。


 できればこのまま自然の流れに任せたいと思っている。もし、僕とその人が関わることに必然性があるなら、関係は続いていくだろうし、そうでないなら関係は消えていくだろう。それって普通の人間関係でも同じことだけれど。

 自分のことも自分で決められないのか、となじられるかもしれないが、そうじゃない。しかるべき時がくれば、僕は決断するだろう。でも今は、まだ、決めるべき時じゃない、と考えている。


 やっぱり僕は、謝らなければいけない。でも、その人が謝罪を受け入れてくれるかどうか。それがわからない。