星が降る場所には

 そこがどれほど素晴らしい場所であっても、いずれ立ち去らなければならない時が来る。ものごとには、あるべき場所がある。

 正しいタイミングで立ち去ることが出来なかった。心の準備ができていなかった。いや、キッカケがなかったのだろうか。言い訳じみているな。

 鍵と鍵穴が合わなければ、扉は開かない。水と油は交じり合わない。ニワトリと卵で親子丼。豚肉で作った牛丼は豚丼だ。

 桜は春に咲いて、散る。夏には葉が茂る。重要なのはポイントを外さないことだ。

 光を求めて進んでいるのに、いつまでたっても闇のままだ。もしかしたら光はもう、店じまいをしてしまったのかもしれない。来年の夏の、海開きを待たなければならないのかもしれない。

 光や、臭いや、温度や、色によって、場、というものが生じる。そのことを僕はある寺社で知った。

 場、が変われば、何もかもが変わる。物理法則すらも。光がゆっくり進んだりする。

 人間は、場の一部であり、場もまた、人間の一部である。そのことを忘れてはいけない。たとえば、星が降る場所には星が降る場所の倫理がある、というように。