猫、アンド猫

 野良猫だった猫はすっかり我が家に居着き、小さな窓から自由に出入りするようになった。でも大抵は家にいる。

 首元の傷は当初の3分の1ほどまで小さくなった。きっともうすぐ治るだろう。

 しかし最近は鼻の調子が悪いらしく、いつも鼻水を出している。

 しかも厄介なことにところかまわず鼻水を飛ばすので、家の中が汚れまくり。毛布、ガビガビ。しかしそれでも憎めないのが猫。おそろしいですね。ええ。

 鼻が利かないせいか食欲もあまりないようで、少し痩せてしまった。今は病院でもらった薬をエサに混ぜている。

 ものすごく人に慣れた猫なので、元々は飼い猫だったのが、病気がちになったせいで捨てられてしまったんだろうか。

 でも猫は何も言わず、今日も寝ている僕の体の上に乗ってくる。そしてまたクシャミをする。

 傷つきやすいものは大切に扱わなくちゃいけない。そしてそれは時にものすごく難しい。

 自分にできることは限られている。そもそも何かをする理由も、いつまでもあいまいなままだ。

 それでもできることといえば、前に進むこと。後ろに下がること。脇道を通ること。立ち止まること。そんなようなシンプルなことしかないのかもしれない。猫のことを思うと、そんな風に考えてしまう。