猫人間がいた。猫のような人間のような、その中間的存在であった。
猫人間は恋をしていた。猫に。
しかし猫人間と猫では種族が違う。結ばれぬ運命であった。
ところでその猫(♀)もまた恋をしていた。相手は人間だった。やはり結ばれぬ運命。
さらにその人間(男)は、とくに恋などにはかかずらわることなく、極めて実直に暮らしていた。特にこれといった喜びも悲しみも無く。
男は春の日差しの中でひなたぼっこをしていた。そこにメス猫がやってくる。男が寝ている縁側からは、庭に生えた椿が見えた。
そのころ、猫人間はパンを焼くため、所定の量の強力粉、砂糖、バター、牛乳、水、ドライイーストをホームベーカリーに投入していた。今度は米粉パンでも作ってみようかな、と考えていた。