どんなに長く亀を飼っていても。

亀と意思疎通することはかなり難しい。あいつらは、餌と交尾のことくらいしか考えていないように見受けられる。

どんなに長く亀を飼っていても、亀の気持ちを理解することはできない。なんだかさびしいような、でも当たり前なような。

絶対にやらないけど、もし僕が亀を近所の川にでも逃がしてしまった場合。それは間違いなく永遠の別れとなる。亀が犬みたいに自力で家まで戻ってくることなんてことが無い限り。

逃げてしまった亀のその後について、僕には何の情報も得られない。永遠の謎。永遠の闇。どんなに長く亀を飼っていても、わからないものはわからないのである。

そんなことを考えていると、この世界で起こっていることの総量に対して、自分の知りうることの量がいかに少ないかを改めて思い知らされる。今こうしている間にも、隣の家や、地中深くや、宇宙の彼方では何かが起こっていて、僕がそれを知ることは、やはり永遠に無い。