打倒!筋トレばばあ達

 筋トレを継続的にやっている。ほぼ毎日(日曜以外の週六日)夜九時から十時までの一時間。わりと規則正しく。

 なぜ筋トレなんかを始めたのか。理由は色々ある。もちろん、モテたいな、という気持ちが全くないと言ってしまうと嘘になる。そりゃあ僕だってモテたい。スキあらば女性にちやほやされたいと思っている。でもそれは、直接的な理由ではないと思う。多分

 カッコよくなりたいのか。ナルシシズムの発露なのか。そうかもしれない。そりゃあぜい肉でダルダルの体よりは、多少なりともマッスルなボディを所持していた方が、日常生活を送る上で気分がいいであろうことは間違いない。ただ残念ながら、一日一時間程度の手軽な筋トレではマッスルとは程遠いのもまた事実。せいぜい「ちょっと締まってるかな?」くらいが限界だろう。現実は非情である。

 こうやって書いていると、本当の動機がいったいなんなのか、自分でもよくわからなくなってくる。あるいは人が趣味を始めるときに「これ」といった動機があることの方が、実は稀なのかもしれない。

 考えつくうちで最大の動機は、単に運動不足を感じていたから。人間の体は使わずにいるとすぐに衰える。よく歩くようにはしていたのだが、それ以外は毎日パソコンのキーボードを叩いたりしているくらい。マズいなとは思っていたのだが、「炒めものをしていたら腕が吊りそうになる」などの自覚症状が増えてきたので、とりあえず自宅で手軽にできる筋トレから始めることにしたのである。

 スクワット、腕立て、腹筋等を主にやるわけだけれど、毎日同じことをやっていても、どうすればより効率よく出来るかとかを考えてやるのはなかなか楽しい。楽しいのだが、一人でコツコツやっているだけだと、なんていうか、「盛り上がり」みたいなものがほとんどないのが寂しいところ。

 例えば、スクワットを百回やるごとに「スクワットばばあの貴重なセクシーブロマイド」が一つ貰える、みたいなことでも、無いよりはマシだと思う。もちろんそんなものは見たくない。全然見たくない。っていうかスクワットばばあって誰なんだ。

 たとえそれが負の要素であったとしても、ダイナミズムというか、ゲーム要素みたいなものがあった方が、張り合いが生まれてやる気が出てくるんじゃないかと思う。

 最近スマホ版のドラクエ1をやったのだが、筋トレというのは「ただひたすらレベル上げをしている」という感覚に近いのではないかと思う。中ボスやラスボスがいなければ、いくらレベルを上げても意味がない。筋トレにも中ボス(腕立て大ばばあ)やラスボス(腹筋ゴッドばばあ)がいればいいのだが。

 とはいえゲームと違い、筋トレは体を鍛えているのだから、現実的に色々なことが変化してくる。っていうか、「鍛錬」ということをゲームシステムに落とし込んだのが「レベル上げ」なのであって、その言い方だと本末が転倒している。

 まず当たり前だけど筋肉が増えた。でも体重は変わらず。脂肪が筋肉に変わった感じだろうか。おそらく有酸素運動をしないと体重は減らなさそう。

 あと、こないだ一人カラオケに行ったとTwitterにも書いたんだけど、声の出が前より良くなった気がする。比較したわけじゃないからわからんけど。

 集中力が多少良くなったような気がする。筋肉の発熱効果によって少し体感温度が上がった(=寒くなりにくくなった)ような気もする。でもどちらも「気のせい」の枠を出ていない。

 本当はスポーツとかをやった方がバランスよく体を動かせるんだろう。そもそも筋トレって要するに自分の体をソフトに痛めつけているわけで、なんとなく倒錯的な感じがしてそんなに好きではない。でもまぁ何もやらないよりはマシかな、という感じ。

 もっと言うと、「筋トレ」という言い方にも微妙に違和感がある。別に筋力・筋肉を鍛えたいわけではない。ただ単に体を動かしたいだけであって、そのための手段がスクワット・腕立て・腹筋だったりするというだけなのだ。「筋トレ」という言い回しには、「筋肉を肥大させることだけが唯一にして無二の目的である」みたいなニュアンスが含まれているのではないか。でもまぁ、既存の言葉の内から適切なものを選ぶとしたらやっぱり「筋トレ」が一番合っているんだろうから仕方ない。