言葉だけで人を救うことはできない、と思う。
言葉というのは、触媒、みたいなものであって、つまりなにかとなにかの橋渡しをするものだ。
本当に人を救うことができるのは、言葉を超えた、もっと大きななにかだと思う。
じゃあその大きななにかってなんなのか?という問題のほうが、本当は重要なんだけど、それはまだ誰にもわかっていないみたいなんだけども。
僕は人生の中で、言葉を通していろいろなものを受け取ってきた。それらのおかげで今まで生きてくることができた。
言葉が存在するのは、人間が存在するおかげで、だから僕は、かつて存在したあらゆる人間のおかげでここまで生きてこれたということになる。あるいは、これから生まれるであろうあらゆる人間のおかげで。
それが素晴らしいことなのか、忌むべきことなのか、今の僕にはわからないが、少なくとも何も無い人生よりはマシだったと思うし、これからもそうやって生きていくのだと思う。
なぜ僕はこんなことを書く気になったのだろう。
なにもなくても生きていける、と思いたいのかもしれない。手ぶらでも。サンダル履きでも。リュックひとつでも。言葉さえあれば。
どうせ人はひとりで生まれてひとりで死んでいくのに、どうして他人の目を気にしなきゃならないんだろう。自分の幸せが他人の幸せになるような生き方ができないんだろう。
鳥のことを考えている間は、鳥になれる。言葉にはそういう力があると思う。多分。