信じるということ

 信じていた。色々なものを信じていた。

 人が人として生きる上で、何も信じずに生きることは実質的に不可能だろう。

 だから信じていた。

 でも、ある時期に一斉に、いくつかの、わりと自分にとって大切だったものらが、信じられなくなってしまった。

 あるものは私の元から去っていったし、あるものは私の方から距離を取らなくてはならないようになった。

 信じていたものを失うと、また新しく何かを信じるのが難しくなる。また裏切られるんじゃないかと不安になる。

 そんなふうになって初めて、信じるということは、人間が社会の中で生きていく上で極めて重要なことなのだ、ということを思い知らされた。

 いい年してなにを甘えたことを言っているのだ、と自分でも思うけれど、実際にそうなのだから仕方がない。

 今更全部を一から信じ直す、というわけにもおそらくいかないわけで、今自分が信じられる数少ないことでもって、なんとかやりくりしていくしかないんだろうな、と思う。