孫の手のおかげで始めて飼い猫を撫でられた話

久しぶりに我が家に住まう2匹のきょうだい猫の話をする。
オスの太郎(仮名)は相変わらず人間に馴染めそうな気配がしない。近づいても脱兎のごとく逃げる。猫なのに。
それでも最近は「人間からエサを貰っている」という概念を学習したらしく、エサ入れにエサが無いと机の上などにしゃがみこみこちらを見つめることでアピールするようになった。進歩。
一方、メスの花子(仮名)はオヤツを手で持って与えられる程度には慣れてきた。一時は煮干しに大ハマりし、誰かが台所に近づくたびにニャーニャー鳴きながら体を家具にこすりつけるという、実に飼い猫らしい仕草でおねだりするまでに。最近は煮干しに飽きつつあるのか以前より食いつきが悪くなってきたが、単に食いつきが悪いだけで、あげればあげた分だけ平らげてしまう。いずれ日本一の骨太キャットになる日も近い。
さらに花子(仮名)は毎晩パソコンデスクの椅子の上で寝るようになった。低反発座布団の暖かさ、寝心地の良さ、程よい閉所感が気に入ったのだろう。
これはチャンスと思い、寝ているスキを突いてちょっとずつ体を撫でることで、「撫で」に慣れさせる試みをしばらく続けることにした。
最初は丸まって寝る花子(仮名)のしっぽの付け根あたりを指先でコチョコチョとくすぐる作戦。触れるか触れないかのフェザータッチであれば花子(仮名)に気づかれることなく触ることができるが、気づかない間に触ってもあまり意味がない。少しでも強く触ると気づかれて逃げてしまうし。
どうも太郎(仮名)も花子(仮名)も、野良時代に人間に対してなんらかのトラウマを背負ったらしく、人が近づくことそのものが苦手らしい。
そこで棒状のものを使って遠くから撫でればイケるんじゃないかと考え、100円ショップでイイカンジのもの物色した結果、孫の手を購入。
棒部分が伸縮式の金属棒で、先端にプラスチックの掻き手、持ち手にシリコンのカバーがついている。明らかにプレゼンなどで使う「指し棒」をベースに手を加えた製品であり、ダ○ソーさんの工夫が感じられる一品。棒部分が細いので猫から見て圧迫感が少ないであろうという判断で選んだ。
早速この孫の手を使って「撫で」にトライしてみたところ、なんと2、3度目から逃げられることなく撫で続けることができるようになった! スゴイ進歩。
最初は寝ているところを後ろからコッソリ撫でようとして逃げられていたのだが、まず寝ている花子(仮名)の顔に孫の手を近づけてニオイをかがせてから、そ~っと体を撫で始めることで逃げられないことがわかった。
さらに撫でを続けると、気持ち良さそうに目を細めるまでに進歩した。猫が喜ぶと言われている腰を軽くポンポン叩くのをやっても平気。でも顔周りを撫でようとすると逃げてしまう。
さらにさらに、まず孫の手で撫で始めてほどよくリラックスしたところで、直接手で撫でることに挑戦してみたが、これにも成功。ついに初めてじっくり手で体を撫でることができた。感動。ひたすら感動。
生後半年くらいで我が家にやってきたときはまだ子猫だったが、今やすっかり成猫になった花子(仮名)。できれば子猫のときに触れ合いたかったが、あくまでも相手は猫。性格によっては生涯触れることも叶わない場合もあるらしいので、こうして触れ合えるだけでも有り難い。煮干しの食べ過ぎで若干ポンポンになった花子のお腹を撫でながらそんなことを思った。
しかし寝ぼけて警戒心が少なくなっている時しか撫でさせて貰えず、普通に起きている間に近付こうとすると逃げられるのは相変わらず。完全に心を許してくれたわけではないようだ。まぁしょうがない。それもまた猫である。