2022年7月12日

 無料期間中のワンピースを読んでいる。「ワンピースが読みづらくなったのはいつ頃からか」などという大変意地悪な読み方をしている。読者が置いてけぼりだな、と感じたのが数話まるまるモンブラン・クリケットの過去ストーリーを続けた所。セリフが多すぎるな、と感じ始めたのが今読んでいるスリラーバークあたりで、同じ頃に絵のゴチャゴチャさも感じ始めている。

 そんな意地悪目線で読んでもやはり漫画としてのクオリティは素晴らしく、グイグイ読めてしまう。いろいろな意味で現代における日本一のマンガなだけはある。

 いわゆるお涙頂戴ものは好きではないのだが、それはそれとして否応なく感動させられてしまう。

 「動物が主人に尽くす」というテーマが頻出する。ココヤシ村の犬。ラブーン。ウォーターセブンのソドム&ゴモラ。儒教における忠孝の思想。要するにハチ公物語だ。

 敵と認めない敵の喧嘩は買わない、というエピソードをシャンクスとルフィが繰り返す。特にシャンクスは第一巻の最も重要と言える場面でそれを行う。理想のリーダー像、理想の組織像としてシャンクスを描き、それがルフィに継承されたことを強調している。

 他にも100年戦い続ける巨人や、ウソップ復帰の件など、とにかく美学や仁義を強調する場面が多い。いまさらだがこれほど「価値観」が全面に押し出された人気漫画もあまり無いのではないか。

 我々日本人はワンピースを「海賊漫画」として呼んでいるが、この漫画が表現している価値観は歴史上に実在した海賊のものとはおそらく程遠い。むしろ日本人的な価値観を表現している、と考えるのが自然だ。

 個人的にはワンピース的な価値観にあまり乗れないし、2020年代にはあまりそぐわないのではないか、と感じるが、個人の感覚なのであまりあてにならない。むしろ縁故主義、絆主義的な価値観は再興しつつあるのかもしれない。